薄っぺらな金属の板や竹で作った板が振るえて、流れる空気を音波に変えるというアイデア。このアイデアを使った楽器は、タイ、ベトナム、ラオスなどにも存在する。東南アジアで生まれたこの笛のような楽器は雲南地方で独自の進化をとげ民族楽器として定着した。それが、中国の中心部に渡り芸術的な形態を整え、演奏も音楽様式も変化してシェンとして成り立ったのではないだろうか。ご存知の通り、日本にも渡来して雅楽に使われるようになった。和式の結婚式などでも流れるあの和音、フュィーーーという独特のゆったりとした音曲。あのハーモニーは日本の笙(しょう)だ。
さて、西の国では、この優秀な楽器を放っておくわけがない。シェンの仕組みを真似たのがヨーロッパのシンフォニウムであり、さらに発展して、ハーモニカであり、コンサーティーナであり、アコーディオンであり、そして世界中で使われているリードオルガンである。新しい楽器では鍵盤ハーモニカ(ピアニカという商品名)もそうだ。西洋ではフリーリード楽器という名で分類して、たくさんの商品としての楽器を作って得意げになっている。
ルーシェンような仕組みの楽器が元となって、リードオルガンができた。それなら、世界のヤマハはルーシェンを語らずしてありえないのじゃなかろうか。山葉寅楠はリードオルガンの修理・生産から出発して楽器メーカーとして世界を制した偉大なる人物であるが、ヤマハの発展の根源にはルーシェンありき、というところだろうか。
笙の仲間
笙の仲間