Musical Saw
鋸(のこぎり)を擦って音を出す。
鋸といっても本物の鋸をかたどった楽器としての金属板だ。おそらく、本物の鋸をバイオリンなんかの弓で擦って音を出したのが始まりだろうが、本物は刃があって危ないし硬くて演奏しにくい。そこで、楽器専用の鋸を商品化したんだろうと思われる。
この楽器は Musical Saw。 日本語カタカナでは「ミュージカル・ソウ」ではなく「ミュージック・ソウ」という名で呼ばれている。Singing Saw とも呼ばれる。
Musical Saw |
弦でもなく、太鼓でもなく、管による笛でもない。コンコンとぶつけて音を出すのでもない。
こんな楽器は総称して何楽器というんだろう。
ザックス=ホルンボステル分類という楽器を体系的に分類する方法があ。この分類では「摩擦体鳴楽器 friction idiophon」という耳慣れない区分になるようだ。
楽器の物体そのものに刺激をあたえて音を出すものを「体鳴楽器」というが、これは木琴、拍子木、シンバル、トライアングルなどのパーカッションが含まれる。
ミュージック・ソウは、物体そのものに弓で擦って刺激をあたえるので「摩擦体鳴楽器」ということになるわけだね。
さて、上のイラストで太ももにはさんでいるのがミュージック・ソウ。Sの字形に曲げて、バイオリンなどの弓で擦ると音が出る。
ビブラートを出しやすく、音の高さを滑らかに移動させることができる。
とはいえ、これは音程が不安定だということに通ずる。すこぶる不安定である。音の高さは感覚的につかむ必要があるので、正確な音程を発生させるには熟練が必要。
まあ、この楽器のおもしろいところは、音程がはっきりしないことであって、クネクネ感が持ち味でもある。
熟練すればどんなキー(調)でもいける。転調もOKだし、アラブの音階も、インドの音階も、タイの音階もOKだ。
いい音か気持ちの悪い音かは意見が分かれるだろうが、他の楽器にはない独特の音色であることは間違いない。色っぽい音?も出せるが、女性の太もものほうが色っぽい。