誰だ、こんなタコ妖怪みたいな楽器を作ったのは。「ヒキガエルのたまご」のようであり、「脳みそ」のようであり、「エキゾーストパイプ」のようでもある。ヤツメウナギが7ひき集まるとこんな感じになるだろう。
誰なんだ、こんなグニュグニュの吸血エイリアンをデザインしたのは。
それは、アドルフ・サックスである。
一般的なトロンボーンはスライド式なので管の長さは自由に伸び地縮させることができるのだけれども、基本は7箇所の定位置がきまっている。このタコ妖怪は6つのバルブで7本の管を制御している。バルブは6つしかないけれど、何も押さえない時も含めると7種類の制御が可能となる。アドルフ・サックスは、普通のスライド式トロンボーン7本を絡みあわせるという発想でこの管楽器を作った。当然、出口のベル(朝顔)は7個ある。
正式な名称をテナー・バルブ・トロンボーンというようだ。私たちが知っているトロンボーンとはまったくもってイメージが違うのだけれども、もともとトロンバというのは日本でいうラッパのことであって、トロンボーンは「大きなラッパ」の意味をもつ。だから、トロンボーンの音域から作ったラッパをトロンボーンと言う名前で呼ぶようになったのだろうね。